地質や岩石(天然記念物)

地質や岩石、鉱物に関する天然記念物は、史蹟名勝と深い関係がある。実際に見学した記念物を、私なりに次のように分類し、その一部を画像で紹介する。

綿向山の接触変成帯 岩石・鉱物

さまざまな種類の珍しい岩石、鉱物が指定されている。代表的なものとして、岐阜県根尾谷の菊花石(きっかせき)が有名である。
写真は、「滋賀県の綿向(わたむき)山麓の接触変質地帯」。石灰岩と粘板岩が花崗岩の接触により、珪灰石(けいかいせき)、輝石(きせき)、ベブス石、ざくろ石などを生じ、粘板岩はホルンフェルス化している様子が観察できる。
玄武洞 岩脈・節理

岩盤の割れ目に貫入した溶岩が凝固し、地表に現れたもので、規則正しい節理を伴うものもある。代表的なものとして、但馬御火浦(たじまみほのうら)や東尋坊(とうじんぼう)が有名である。
写真は、兵庫県の「玄武洞(げんぶどう)」。六角形の断面をもつ柱状節理が美しい。玄武岩の名は、この玄武洞に由来すると言われている。
波根西の珪化木 化石

過去の生物遺体や痕跡、さらに波の痕跡が地層の中に残ることがある。その化石の種類から地層ができた年代を推測できる示準化石と、堆積当時の自然環境を示す示相化石の代表が指定されている。代表的なものに魚津埋没林がある。
写真は、「波根西(はねにし)の珪化木」。島根県。
吹割瀑 河食

V字谷をはじめとして、河水の浸食により特徴のある地形が作られている。代表的なものとして、五箇瀬川渓谷(高千穂峡)、称名滝などが有名である。
写真は、群馬県の「吹割渓ならびに吹割瀑(ふきわればく)」。片品川の川底の亀裂に流れ込む水流が、ナイアガラの滝を思わせる。
獅子巌 海食

打ち寄せる波浪によって海岸が削られ、海食崖をはじめ、種々の地形が形づくられる。曽々木海岸が有名である。
写真は、「熊野の鬼ケ城 附 獅子巌」。三重県。
傘岩 風化・風食

風や雨水による浸食、堆積により、特異な景観を呈することがある。鳥取砂丘や阿波の土柱などが有名である。
写真は、岐阜県恵那峡にある「傘岩」。風雨によって下が浸食され、花崗岩がキノコ状になった岩石で、くびれた部分の周囲は約2mほどといわれる。
立山の山崎圏谷 氷河遺跡

氷河時代に形成された地形や堆積物が、高山に圏谷(カール)として残っている。流水がV字谷を作るのに対して、氷河はU字谷を形成する。日本アルプスなどで、その遺跡が見られる。写真は、「薬師岳の圏谷群」。
小笠原南島の沈水カルスト地形 石灰岩地形

カルスト地形と呼ばれる石灰岩台地とその地下の鍾乳洞が特有の景観を作っている。その代表として、秋芳洞(あきよしどう)が有名である。写真は、「小笠原南島の沈水カルスト地形」。
地震動の擦痕 隆起・沈降・地震

地震による地殻変動の結果、土地が隆起したり沈降したりした大きな変化により、美しい海岸地形を作ることがある。佐渡小木(おぎ)海岸は8kmにもおよぶ海食崖として有名である。写真は、1930年の北伊豆地震によりできた魚雷の傷(「地震動の擦痕」)。静岡県。
根尾谷断層 断層・褶曲・特異な地形

地震の時にできた断層や、傾いたり曲げられた地層が崖で見られることがある。これらは、日本列島の形成過程を今に伝える貴重な歴史的資料であり、その顕著なものが指定されている。
写真は、1891年の濃尾地震によりできた高さ6mの水鳥(みどり)の断層崖で、全長80kmにおよぶと言われる「根尾谷断層」の一部(特別天然記念物)。岐阜県。
昭和新山 火山

火山または火山活動による岩塊が指定されている。代表的なものとして、昭和新山が有名である。
写真は、有珠山麓に新たに誕生した北海道の「昭和新山」(特別天然記念物)。三松正夫氏が克明な記録を残している。三松ダイアグラムとして世界的に有名。
万野洞穴 溶岩洞穴・溶岩樹型

噴出した溶岩が溶岩流として抜け出た後にトンネルなどができることがある。富士山麓に多いと言われる。写真は、「万野洞穴」。
白糸ノ滝 地下水・湧泉

山に降った雨や雪が地下に浸透し、山麓に湧出することが多い。富士山周辺には、溶岩流に沿って流れ山麓に豊富な湧き水があることから、指定が多い。写真は、「白糸ノ滝」。
高瀬渓谷の噴湯丘 温泉

地下の石灰分や珪酸分を溶かした温泉水が、地上で噴湯丘や噴泉塔を形作ることがある。代表的なものとして、白骨温泉の噴湯丘が有名である。
写真は長野県の「高瀬渓谷の噴湯丘」。今なお形成中の噴湯丘が見られることが特徴で、周辺の河原からは熱水が湧出している。