声明の歴史(天台声明) | 声明の歴史 | 天台声明 | 声明の楽理 | 声明の旋律 | 声明の楽譜 |
1.声明とは
声明(しょうみょう)とは、もともとインドでは因明(論理学)、内明(内展学)、医方明(医学)、工巧明(工芸学)、声明(音韻学)とともに五明(五種の学問)の一つであった。声明は仏教儀式音楽と思われるが、広くは音韻学で言語、文学、音韻、文法に関する学問とされてきた。我が国では悉曇(しったん)の読み書きを声明業といっていたが、次第に仏教の儀式で唱える偈頌(げじゅ)や和讃を指すようになった。
声明はインドから中国を経て日本に入った仏教の儀式音韻は、一般に梵唄(ぼんばい)と呼ばれ、梵または唄と言われた。「梵」とは本来婆羅門教の最高理論のことで、転じて古代インドを形容します。「唄」はインドで法言の歌詠、中国で教を詠ずることを指しています。
2.声明の歴史
日本に仏教が渡来したのは、朝鮮を経て六朝仏教であり、奈良朝になると遣唐使の派遣により、唐朝の仏教が直接輸入された。養老四年(720)には唐僧道栄の曲節によって儀式を行うよう指示されている。ついで天平勝宝四年(752)には東大寺大仏殿の開眼供養会には、「四箇法要」(唄・散華・梵音・錫杖)等が唱えられ、声明・雅楽のみならずいろんな音楽が演奏され、奈良声明の基礎が確立した。
平安時代に入ると、延暦23年(804)に最澄と空海が唐に渡ってそれぞれ天台・真言の二宗を伝え、真言声明は空海によって東寺に、天台声明は円仁(慈覚大師)により、延暦寺に声明の中心地が形成された。
3.天台声明
4.声明の楽理
声明の楽理は、片岡義道先生の「叡聲論攷」に1音律、2旋律型、3拍子、4声明観に分かれと言っています。
十二律表
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 1 | ||||||||
中国古代の律名 | 黄 鐘 |
大呂 | 太 簇 |
夾 鐘 |
姑 洗 |
仲 呂 |
す い 賓 |
林 鐘 |
夷 則 |
南 呂 |
無 射 |
應 鐘 |
黄 鐘 |
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日本所用の律名 | 壱越 | 断金 | 平 調 |
勝 絶 |
下 無 |
双 調 |
鳬 鐘 |
黄 鐘 |
鸞 鐘 |
盤 渉 |
神 仙 |
上 無 |
壱 越 |
|||||||
よ み が な |
い ち こ つ |
たんぎん | ひ ょ う じ ょ う |
し ょ う ぜ つ |
し も む |
そ う じ ょ う |
ふ し ょ う |
お う し き |
ら ん け い |
ば ん し き |
し ん せ ん |
か み む |
い ち こ つ |
|||||||
洋楽平均律調 | D | ♯♭ | E | F | ♯♭ | G | ♯♭ | A | ♯♭ | B | C | ♯♭ | D | |||||||
洋楽音階 | レ | ♯レ | ミ | ファ | ♯ファ | ソ | ♯ソ | ラ | ♯ラ | シ | ド | ♯ド | レ | |||||||
長 音 階 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 1 | 2 | ||||||||||||
短 音 階 | 2 | 3 | 4 | ♯5 | 6 | 7 | 1 | 2 | ||||||||||||
呂 旋 (上曲) 七声呂旋 | 宮 | 商 | 角 | 変徴 | 徴 | 羽 | 変宮 | 宮 | ||||||||||||
律 旋 (下曲) 五 音 | 宮 | 商 | 角 | 徴 | 羽 | 宮 | ||||||||||||||
中 旋 (中曲) 七声律旋 | 宮 | 商 | 嬰商 | 角 | 徴 | 羽 | 嬰羽 | 宮 | ||||||||||||
合 曲 | 宮 | 商 | 嬰商 | 角 | 角律 | 徴 | 羽 | 嬰羽 | 変宮 | 宮 | ||||||||||
例 懴 調 | 羽 | 宮 | 商 | 角 | 徴 | 下羽 | 羽 | |||||||||||||
邦楽陽律旋 | 宮 | 商 | 嬰商 | 角 | 徴 | 羽下 | 羽 | 宮上 | ||||||||||||
邦楽陰律旋 | 宮 | 商変 | 角律 | 徴 | 羽変 | 羽嬰 | 宮上 |
<天台常用声明より>
〇日本音階の基本音(主音)は壱越音である。 洋楽長調の基本音(主音)はC音である。 洋楽短調の基本音(主音)はA音である。 声明音階の基本音(主音)は宮音である。
〇声明は、三種・五音(ごいん)・七声(しちせい)及び12律から構成されている。
五音は宮(きゅう)・商(しょう)・角(かく)・徴(ち)・羽(う)の五音階からなっている。
七声は五音に上下半音の嬰(えい)と変(へん)との2音を加えてたもの。
三種とは呂(ろ)・律(りつ)・中(ちゅう)の三旋です。五音に変宮・変微を加えたものが呂旋、五音のみであるのが律旋、嬰商・嬰羽を加えたものが中旋である。
〇声明は三種の曲(呂旋、律旋、中旋)が有るが、実唱相傳の上では律旋的であり、呂 旋は古伝となっている。又呂旋と言ったも実唱上多分に律旋化している。
〇三曲は各々口伝相承の上で特殊の旋律に依って異趣有ります。
〇合曲とは呂旋・律旋の混合の旋法である。
〇例懴調の基本音(主音)は(高麗調)平調であり、主音宮は常に平調である。
〇故片岡義道先生曰く、声明及び雅楽を洋譜に換えて奏することは易いことであるが、それらの持っている妙味を発楊することは不可能である。楽理的演奏に非ずして楽理
と演奏とを区別して本来の曲味を伝承習熟することが肝要である。其の為には旋律型の熟成と音律の理解こそ大切である。
D | 羽 | 宮 | 宮 | 宮 | 宮 | 壱越 | 一 |
♯C | 下羽 | 変宮 | 変宮 | 上無 | 十二 | ||
C | 嬰羽 | 嬰羽 | 羽 | 神仙 | 十一 | ||
B | 徴 | 羽 | 羽 | 羽 | 盤渉 | 十 | |
♭B | 鸞鐘 | 九 | |||||
A | 角 | 徴 | 徴 | 徴 | 徴 | 黄鐘 | 八 |
♭A | 変徴 | 鳬鐘 | 七 | ||||
G | 角律 | 角 | 角 | 双調 | 六 | ||
♯F | 商 | 角 | 角 | 下無 | 五 | ||
F | 嬰商 | 嬰商 | 勝絶 | 四 | |||
E | 宮 | 商 | 商 | 商 | 商 | 平調 | 三 |
♭E | 断金 | 二 | |||||
D | 羽 | 宮 | 宮 | 宮 | 宮 | 壱越 | 一 |
洋楽名 | 例 懴 調 |
合 曲 |
呂 旋 七 声 呂 旋 |
中旋 七声律旋 |
律 旋 五 音 |
日十本二名律 |